いつまでもキレイで、美しく。それがメイクの基本なのでは

メイクという言葉はメーキャップの略語で、化粧、あるいは化粧法という意味があるそうです。特に俳優さんが役作りのために顔の化粧をする事をこう呼ぶそうですね。しかし、今は何も俳優さんだけではなく、あらゆる一般女性が普段から化粧する事をこう呼ぶ事もあります。化粧品のテレビコマーシャルでは、頻繁にこの言葉が使われていますね。女性は常に美しくありたいと願う気持ちがありまして、その一つの手段として化粧をする。
しかし、この化粧という言葉もおもしろいもので、化粧の化の字は化けると書きますね。文字通り、化粧は化けるためのものだと、いつか誰かさんが言ってましたっけ。考えてみれば失礼な事ですね。
僕の家の近所に有名なおばあさんがいます。もう八十は過ぎているようなのですが、分厚い化粧に素顔を隠し、ほんのり頬紅など塗りたぐり、頭にはいつもシャレた帽子を乗せている。そのファッションもスゴい。上下ピンクやレッドのカラーで揃え、白いタイツに超ミニスカート。腰はかなり曲がっていますので、歩き方もぎこちない。その尋常ならざる出で立ちに、道行く人は異様な視線を投げかける。まあ、当然ですね。人はそのおばあさんを見て手を打って笑います。当のおばあさんは素知らぬ顔で先を急ぎます。
こんなふうに、おばあさんは町の笑いものになっているのですが、僕は笑えなかった。それはそのおばあさんの気持ちを勝手に想像したからです。僕の頭をかすめたのは、おばあさんはただ、いくつになってもキレイでいたいという思いから、その激しいまでのメイクを貫いているのだろう、という事でした。
そう、女性として生まれてきたからには、息絶える瞬間まで、美しくありたいと願うものだから。僕の母親がそうでした。母は七十四で他界しましたが、死の直前まで女である事を忘れてはいなかったようです。痴呆と診断されてもなお、化粧は欠かさなかった。そんな母親を見てきたからこそ、あのおばあさんの事を笑う気がしなかったのです。